目的と概要

日本列島はプレートの収束境界に位置し、地震・火山噴火などの自然災害が頻発する。激しい造山運動のため居住に適するエリアが限定され、局地的災害で集中的な物的・人的損害が発生することも多い。

国内屈指の人口密集地を擁する大阪平野では、過去20年間余(すなわち甚大な損害を被った阪神・淡路大震災以降)に、地下情報の把握を目的として、国及び地方自治体によって多くの人工地震探査が行われてきた。

しかしながら、それらの貴重な情報の総合的解釈に立脚して、活断層など自然災害の原因となる地質構造のリスク評価が十分に進んでいるとは言い難い。探査衛星が提供する最先端のリモートセンシングデータ解析も、従来の通説を追認する段階にとどまっており、地域社会への災害ハザード情報提供は遅々として進まない。そのような中、本年6月18日には大阪北部地震が発生し、大都市インフラの脆弱性が全く改善されていないことを改めて露呈した。

この現状を打破し自然災害に耐えうる都市圏を構築するために、いま強く求められているのは、継続的な地質状況及び地盤特性の評価と、災害のバッファーとなる地域環境の構築である。さらに、自然災害に対する靭性ならびに復興へのポテンシャルを具備したコミュニティの構築及び維持についても、それぞれの地域の特性を踏まえて、多面的な問題点の把握と提言を行う必要がある。

 

大阪府立大学は、「高度研究型大学―世界に翔く地域の信頼拠点―」を基本的理念として標榜し、地域社会のニーズに応える最先端の研究成果を数多く上げて来ている。たとえば、大阪及び周辺地域の活断層評価に関する最新研究成果の多くは、本学の運営する学術情報リポジトリ(OPERA)に登録され、万人が無償で閲覧・ダウンロードすることができる。しかし、ともすれば個々の業績はその分野の専門家のみが情報を共有しており、総合的な評価が行われた事例は比較的少数にとどまっている。

今回開設申請する地域防災センター(以下「センター」という)は、この現状を打破して、学域や研究科の垣根を越えた分野横断型の研究を志向する。究極の目的は総合的研究の成果を地域社会に還元して、減災・防災への取り組みを推進支援することであるが、本学における学士教育カリキュラムとの連携を強化し、地域防災の牽引役となり得る有為な次世代リーダーの育成についても積極的に取り組むものである。